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札幌高等裁判所 昭和25年(う)40号 判決 1951年6月28日

控訴人 被告人 吉正雄 外一名

弁護人 諸留嘉之助

検察官 佐藤哲雄関与

主文

本件各控訴を棄却する。

当審における訴訟費用は被告人等の連帯負担とする。

理由

弁護人諸留嘉之助の控訴趣意は別紙記載の通であつて、これに対する判断は次の通りである。

第一点について、

原審第七回公判調書によると、裁判官は弁論を終結し判決の宣告をなす旨を告げて判決主文及び理由を朗読し且つ上訴申立書を差出すべき裁判所を告知した、とあつて、上訴期間を告知した旨の記載がないけれども、原判決宣告の効力に影響を及ぼさないから、原判決を破棄すべき理由とならない。

第二点について、

原判決挙示の各証拠によると、判示窃盗事実を認めるに足り、原判決に事実の誤認があるとは認められないのである。

第三点について、

原判決の認定した窃盗の犯状その他原審において証拠とすることができた各証拠によつて認めうる諸般の情状を考慮すると、原判決が被告人等を各懲役一年に処したのは、刑の量定が不当であるとは認められないのである。

よつて、刑事訴訟法第三百九十六条、第百八十一条、第百八十二条、第百八十五条を適用し、主文の通り判決する。

(裁判長判事 藤田和夫 判事 臼居直道 判事 村上喜夫)

弁護人諸留嘉之助の控訴趣意

第一点原審第七回公判調書は事実を審理した後結審し有罪判決を言渡したものであるのに、刑事訴訟規則第二百二十条に依り上訴申立書を差出すべき期間を告知した旨の記載がないから告知せなかつたものと認められ、違法の言渡しである。

第二点被告人等が窃取した物件の数量を否認し居るに拘はらず被害者の証言を唯一の証拠として判決したのは審理を尽さぬものであると認めらるると同時に、刑事訴訟法第三百八十二条に該当する事実の誤認があつて判決に影響を及ぼすことが明らかであるに該当するのであります。

右の事実は昭和二十四年十月八日第三回公判調書中証人藤本安次郎(被害者)の証言に対して被告等は私の盗んで来たものと数量や大きさが違ひます持つて来て調べたときは二七〇ヤールしかありませぬでしたと述べたとあり、検察官の被告人に対し尋問したのに対し、被告人両名は山本善出(李善出のコト)が戸を明け李と云ふ人が店内に這入つて私は外に居り李が中から山本に渡し山本から私が受取つたのです。問「受取つてどうした」私の脇に置き四五回受取つたとき、もう行こうと声をかけたのですとあつて被告人等の盗んだ品種数量は被害者の証言を軽忽に信じ得べきものでない。

(その他の控訴趣意は省略する。)

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